1. Hello

テンプレート生成ではdfx newコマンドを使ってプログラムを生成しましたが、FrontendとBackendの両方のソースが出力され、ファイルが多すぎて分かりづらいかと思います。

そのため、テンプレート生成を使用せずに、スクラッチからビルドしてみることにしましょう。

本ドキュメントではBackendを中心に解説しますので、ここではFrontendは用意しません。

以下のような構成で作成しますので、実際のプロジェクトでは変更してください。

項目

Project Name

icptest

Canister Name

backend

1. プロジェクトの作成

まずはRustの一般的なライブラリプロジェクトを作成します。

「icptest」はプロジェクト名ですので、任意に設定して構いません。

$ cargo new icptest --lib
$ cd icptest

2. プロジェクト資材準備

(1) dfx.jsonの作成

以下のようなdfx.jsonを用意してみましょう。

dfx.json

(2) didファイルの作成

backend.did

(3) Cargo.toml編集

a. crate-type追加

ライブラリセクションを追加して、crate-typeにcdylibを指定します。cdylib を指定することで最終成果物の .wasm ファイルを動的ライブラリにします。

b. dependencies追加

(4) Cargo.lock作成

一般にcargo buildを実行すればCargo.lockは生成されます。しかしながら、後述のdfx buildコマンド (dfx deploy)では、内部的にcargo buildコマンドを「--locked」オプションで実行しているようですので、事前にCargo.lockファイルを用意しておく必要があります。

(5) プログラム

src/lib.rs

3. ビルド

DappをビルドしてローカルPC上にCanisterに配置する手順を以下に示します。

(1) サービス起動

まずは、ローカルPC上にCanister実行環境を起動します。dfx startコマンドで行います。以下に実行例を示します。

起動オプションの詳細は公式ドキュメントを参考にするとよいでしょう。

--cleanオプションをつけると、起動時にCanisterを初期化します。初回起動、もしくは--cleanでサービスを起動した時点ではCanisterは一つも登録されていません。

--backgroundオプションをつけるとコマンドが復帰し、サービスがバックグラウンドで起動されます。起動したサービスは、dfx stopコマンドで停止できます。

(2) Canister作成

作成したDappを配備先のCanisterを作成します。

Canisterが一つも登録されていない状況から本コマンドを実行した場合、作成するCanisterのほかに、Wallet Canisterが作成されます。Internet ComputerではDappを実行させるためのCycleと呼ばれる燃料に相当するものが必要です。

本番環境では ICPトークンをCycleに変換してDappを実行します。ローカル環境の場合には、コストはかかりませんが Cycle の仕組みがあり、作成されたWallet Canisterで管理されています。

(3) ビルド

Canisterに配備するwasmモジュールをビルドします。

target/wasm32-unknown-unknown/release/ディレクトリにwasmモジュールが生成され、Canister向けに最適化されたモジュールが、./.dfx/local/canisters/<Canister名>/<canister名>.wasmに格納されます。

(4) 配備

簡易UIのCanisterも用意されます。このCanisterを使うことで、WebページからDappへ簡易のリクエストを発行できます。

補足

なお、手順(2)~(3)は、dfx deployコマンドを実行する過程で必要に応じて実行されます。説明のため記載しましたが、実際の作業では省略して構いません。

まとめ

各ファイルと定数の関係を以下に示します。

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