4. ic_cdk::call()
あるCanisterから別のCanisterの機能を呼び出す方法について解説します。
以下の公式サンプルを参考にしています。
https://internetcomputer.org/docs/current/developer-docs/backend/rust/intercanister
このサンプルでは、2つのCanister間のやりとりを、Publisher-Subscriberパターンを使って実現しています。
Publisher-Subscriberパターンとは、送信側と受信側を結合せずに、アプリケーションから関心を持っている複数のコンシューマーに対して非同期的にイベントを通知できるようにする仕組みです。
メッセージを送信する側:Publisher
メッセージを受け取る側:Subscriber
Publisherが送信したメッセージはトピックという送信先に送られます。トピックに送信先のCanister Idを紐づける「subscribe」を行うことで、送信したいSubscriberへと送るようにします。
1. Rust Workspaceの作成
(1) ディレクトリ構成
以下の2つのCanisterを作成するため、Rustのcargo workspace
を使用します。
publisher
subscriber
※個人的には、icptest直下のsrcディレクトリは不要として各プロジェクトディレクトリでもよいかと考えていますが、公式サンプルと同じ構成としています。
(2) プロジェクトディレクトリ作成
(3) Cargo.toml作成
(4) dfx.json作成
2. 'publisher' Canister作成
(1) Rustプロジェクト作成
(2) src/publisher/Cargo.toml編集
a. crate-type追加
ライブラリセクションを追加して、crate-typeにcdylibを指定します。cdylib を指定することで最終成果物の .wasm ファイルを動的ライブラリにします。
b. dependencies追加
(4) src/publisher/src/lib.rs作成
publisher側では、2つの関数を定義しています。
subscribe()
publish()
a. subscribe()
subscribe()関数は、'subscribe' canisterから呼び出されることが想定されており、topicと通知すべきsubscriberの組をpublisher側に登録する処理です。呼び出し元はic_cdk::caller()
でPrincipal Idを取得し、それをキー、topicを値として SUBSCRIBERS へ追加しています。
b. publish()
publish()関数は、フロントエンドなど外部からメッセージを受け取り、subscriberへ通知する処理です。この公式サンプルでは、Counterという構造体が定義されていてpublish()関数の引数として渡されます。
他のCanisterへの通知には、ic_cdk::notify()
関数を使用しています。Canisterの呼び出しは時間かかりますので、publish()関数がasync
(非同期)で定義されている点や、#[update]
である点もご注意ください。
3. 'subscriber' canister作成
(1) Rustプロジェクト作成
a. crate-type追加
ライブラリセクションを追加して、crate-typeにcdylibを指定します。cdylib を指定することで最終成果物の .wasm ファイルを動的ライブラリにします。
b. dependencies追加
subscriber側では、3つの関数を定義しています。
setup_subscribe()
update_count()
get_count()
a. setup_subscribe()
publisher側へsubscribe登録を行うための設定を行うために用意された関数です。この関数を呼び出すことで、引数で指定した'publisher' Canisterのsubscribe()関数を呼び出して、指定したtopicの場合にメッセージを通知してもらうようにしています。
Canisterの呼び出しには、ic_cdk::call()関数を使用します。setup_subscribe()関数は時間がかかるため、async
であること、および、ic_cdk::call()は非同期で呼ばれますがその応答を待つため 関数呼び出しで.await
が付与されている点にご注意ください。
b. update_count()
受け取った数値をカウンタに加算しています。
c. get_count()
現在のカウンタ値を取得します。
4. サービス起動
5. deploy
dfx.jsonのあるディレクトリに移動した上で、以下を実行して下さい。
もし、Cargo.lockファイルがなければ、dfxコマンドがエラーとなりますので、以下で作成しておくとよいでしょう。
6. 動作確認
(1) setup_subscribe呼び出し
第1引数にPublisherのCanister Id、第2引数にTopicを指定して、subscribeの設定を行います。
Publisherのcanister Idは、dfx canister id publisher
で取得できますから、シェルスクリプトのCommand Substitution(コマンド置換)を使って第1引数に指定するとよいでしょう。それに合わせて、dfx call コマンドの引数は単一引用符(')から、二重引用符(")に変更し、引数内の文字列を括る二重引用符(")の前にエスケープ記号 (\
)を指定するとよいでしょう。
topicは自由に設定できますが、ここでは ICP
とします。
(2) publish呼び出し
publisherに対して、指定したトピックでpublishしてみます。
(3) get_count呼び出し
subscriberに対して、指定したトピックのカウントを取得してみます。publishした値が反映されていることが確認できます。
最終更新